「日本のITが終わってる」ってどういうこと?その理由【全5選】を徹底検証!

「日本のITは終わっている」といった言説を、SNSや匿名掲示板で見かけたことはありませんか?一見、極端にも思えるこの意見。しかし、その背景には業界構造や企業文化など、実は多くの課題が根深く存在しています。本記事では、なぜそのような評価がされるのか、5つの代表的な理由をもとに日本のIT業界の現状を詳しく紐解いていきます。
日本のIT業界は世界からどう見られているのか

日本はかつて世界をリードする技術大国とされてきました。NECや富士通、日立などの大企業が情報技術の最前線で活躍していた時代もありました。しかし近年では、米国のGAFA(Google、Apple、 Facebook、 Amazon)や中国のBAT(Baidu、 Alibaba、Tencent)と比較して、存在感が大きく薄れているというのが国際的な見方です。
世界のIT企業ランキングを見ると、日本の企業は上位にほとんど見られません。時価総額や技術力、グローバル展開力など、あらゆる面で後塵を拝しており、日本のIT企業が国際競争力を失いつつあるという現実を突きつけられています。
実際の口コミやエンジニアの言説例

日本のIT業界に対する失望や疑問の声は、さまざまなメディアやプラットフォームで数多く見受けられます。SNSや転職系の掲示板では、現役エンジニアや元IT従事者が率直に自らの体験を語っています。
以下は、その一部を抜粋したものです。

「3次請けで常駐中。開発はせず、Excel管理ばかり。半年いてもコードを書いたのは数行だけ」



「配属されてから研修なし、仕様書もなし。丸投げで炎上プロジェクトに投入されメンタルがやられた」



「AIやクラウドに興味があって入社したのに、Javaで保守ばかり。時代のギャップが激しい」



「クライアント先では正社員以下の扱い。自社の文化もわからず帰属意識もない」
このような言説は一部に偏った意見とも捉えられがちですが、繰り返し多くの人が発信していることからも、決して一過性のものではなく、構造的・文化的な課題を反映しているといえるでしょう。
日本のITが終わっていると言われる理由5選


ここでは実際に日本のITが終わっていると言われる理由を、5つの切り口で詳しく解説していきます。
1.多重下請け構造で“技術者”が使い捨てられている
日本のIT業界では、大規模な案件を複数の企業で分担する「多重下請け構造」が一般的になっています。これは、発注元企業から元請け、一次受け、二次受け……と工程が細分化され、それぞれの会社が一部の役割を担うという形です。
この構造が抱える最大の課題は、現場で実際に手を動かすエンジニアが、プロジェクトの意思決定から遠ざけられやすく、また業務の裁量を持ちにくい点にあります。加えて、企業間で中間マージンが発生することで、実際の労力に見合った報酬がエンジニア本人に十分還元されないこともしばしばです。
このような状況では、技術者としての成長機会を見出しにくく、モチベーションの低下や離職のリスクにもつながります。若手がキャリアを積みにくい環境が続けば、結果として優秀な人材が別業界や海外へ流出するという悪循環が生まれてしまいます。
2.内製化が進まず、海外に比べて“開発力”が育たない
欧米や中国では、自社内でプロダクト開発を行う「内製化」が進んでいます。これにより、開発スピードや技術蓄積、ノウハウの共有が可能になり、企業全体のITリテラシーも高まっています。
一方、日本企業では「システムは外注するもの」という文化がいまだ根強く、社内のエンジニアを増やすことよりも、SIerに任せておけばよいという判断が多く見られます。
その結果、自社サービスに対する理解が浅くなり、仕様書通りに開発するだけの“受け身のIT”が定着。変化への対応力やイノベーション創出も著しく低くなっています。
3.技術より“年功序列・忖度”が評価される企業文化
多くの日本企業では、実力よりも年齢や在籍年数、上司への忠誠心が評価の基準となるケースがいまだに少なくありません。これにより、優秀な若手エンジニアが冷遇され、モチベーションを失って離職することもあります。
また、技術選定や設計方針に対しても「上司が言ったから」「前例があるから」といった理由で非効率な判断が下されることも。
結果として、イノベーションや技術革新が阻まれ、旧態依然とした開発手法や体制が温存され続けています。
4.上流工程が重視され現場で使えるスキルが育たない
日本のIT企業では、設計や要件定義といった「上流工程」が重要視される傾向があります。これは一見正しいように思えますが、実装やテストといった「下流工程」を軽視しすぎることで、技術者がスキルアップできないという問題を引き起こしています。
上流工程ばかり担当していると、最新のフレームワークや開発環境に触れる機会が乏しくなり、市場価値の高い技術力を身につけるのが難しくなります。その結果、現場から離れた“管理者”ばかりが量産され、実行力のあるチームが構築できなくなってしまうのです。
5.経営陣のIT理解が乏しく、現場との温度差が深刻
多くの日本企業において、経営層がIT出身ではないケースが一般的です。これは製造業中心の時代の名残でもあり、IT部門が「コストセンター」として扱われていることが原因の一つです。
そのため、現場のエンジニアがどれだけ革新的な提案をしても、経営陣の理解が得られず却下されることが多々あります。こうしたトップと現場の認識のズレが、企業全体の競争力低下を招いているのです。
日本のIT業界にも終わっていない企業は山ほどある


とはいえ、日本のIT業界全体が終わっているわけではありません。むしろ、一部の企業ではグローバル市場でも通用する技術力を持ち、積極的に内製化やリモートワーク、アジャイル開発などの取り組みを行っています。
たとえば、メルカリやサイボウズ、Sansan、スマートHR、ユーザベースなどは、開発チームが裁量を持ち、エンジニア主導でのプロダクト開発が行われている企業です。
こうした企業では、若手エンジニアが早期から責任あるポジションを任され、技術的な意思決定にも関与できるため、成長環境として非常に魅力的です。
成長性のある企業の見極め方とは?


日本のIT企業の中で、どの企業が将来的な成長性を持っているのかを見極めるためには、いくつかの視点から総合的に判断する必要があります。単なる知名度や規模だけでは、本当の意味でエンジニアが活躍できる環境を測ることはできません。
エンジニア比率が高いかどうか
組織全体に対してエンジニアが占める割合が高い企業は、エンジニアリングを事業の中核と位置付けている傾向があります。逆に営業部門や管理部門が大半を占めている企業では、エンジニアの声が通りにくく、技術投資も限定的になりがちです。
技術サイドの経営関与(CTOやVPoEの存在)
CTO(最高技術責任者)やVPoE(エンジニア組織の責任者)が経営メンバーとして機能しているかも重要な指標です。技術者が経営判断に直接影響を与えられる体制があることで、技術負債への理解やリファクタリングへの投資も実現しやすくなります。
技術広報・発信が活発であるか
企業の技術ブログ、登壇実績、オープンソース貢献などが活発であれば、その企業は技術文化を大切にしているといえます。発信が活発な企業は、社外からの評価だけでなく、社内でもエンジニアの主体性が促進される環境づくりができている傾向にあります。
働き方や開発スタイルの柔軟性
リモートワークの導入状況、スクラム開発の採用、技術選定の自由度など、柔軟な働き方を許容している企業は、エンジニアに対して信頼と裁量を与えている証拠です。こうした環境では創造的な仕事が生まれやすく、エンジニア自身の成長にもつながります。
これらを総合的に見極めることで、「名前は知っているけど、実態はブラック」な企業と、「表に出にくいけれど、成長機会に満ちた優良企業」とを見分けることが可能になります。
まとめ


「日本のITが終わっている」と言われる背景には、多重下請け構造、内製化の遅れ、年功序列による非合理な評価制度、そして経営層と現場の断絶といった、複雑かつ根深い構造的課題が存在します。こうした環境では、若手エンジニアが本来の実力を発揮できず、成長機会を奪われることもしばしばです。
しかし一方で、すべてのIT企業が閉塞しているわけではありません。技術を武器に市場で勝負している企業、エンジニアが意思決定に参加できる文化を持つ企業、そして若手が裁量をもって挑戦できる環境を整えている企業も確実に増えています。
大切なのは、悲観的な言説だけに振り回されず、変化を受け入れ進化を遂げようとしている企業に目を向けること。そして、自分にとって本当に価値のあるキャリアを描ける場所を見極める目を養うことです。本記事が、あなたのキャリア選択におけるヒントとなれば幸いです。