SES(System Engineering Service)企業を選ぶうえで「福利厚生」が充実しているか気になるエンジニアは少なくないと思います。しかし「福利厚生が充実している」と一言で言っても、その中身や活用実態は企業によって大きく異なります。本記事では、SES企業における福利厚生の必要性や制度内容、優良企業の具体例、そしてホワイト企業を見抜くための視点までを徹底的に解説します。
SES企業に福利厚生があるメリット

SES企業では、基本的に自社オフィスではなくクライアント企業に常駐して働くケースが一般的です。そのため、「実際の職場環境はクライアント企業次第だから、福利厚生をどの程度重視すべきか分からない」と感じる方もいるでしょう。確かに、日々の働きやすさは常駐先の環境に左右される部分もあります。しかし、それだけが全てではありません。
客先常駐という働き方は、自社とのつながりを感じにくくなったり、自分の評価が見えづらくなったりすることがあります。その結果、「今後どのようにキャリアを積んでいけるのか」「自分は会社に必要とされているのか」といった不安を抱きやすい傾向があります。
こうした不安を解消し、安心して働き続けられる環境を支えてくれるのが福利厚生の存在です。実際、SES企業の中には福利厚生が十分に整っていないところも少なくありません。だからこそ、どのような制度があり、社員をどこまでサポートしてくれるかを見極めることが重要です。福利厚生の充実度は、その企業が「エンジニアをどれほど大切にしているか」を示す指標にもなります。
SES企業を選ぶ際には、給与条件や関われる案件だけでなく、「福利厚生を通じて会社が社員とどう向き合っているか」という視点を持つことも大切です。実際に、SES企業における福利厚生がどのような場面で重要になるのか、具体的なメリットを整理して解説します。

(1)仕事の生産性が向上する
福利厚生は、単に「待遇が良い」ことを示すものではなく、社員が仕事に集中できる環境を整えるための仕組みでもあります。
たとえば、リモートワーク制度やフレックスタイム制度、独自の休暇制度などは、心身のバランスを保ちつつ働ける環境があるかどうかは生産性の向上に直結します。
特にSES企業では、成果を上げることで新たな案件へのアサインやキャリアアップのチャンスにもつながるため、生産性を高める福利厚生は非常に重要なポイントです。
(2)キャリア形成を支援してくれる
SES企業では、担当する案件によって身につくスキルが異なるため、「自分のキャリアの方向性が見えづらい」と感じることがあります。
しかし、資格取得支援や外部研修、キャリア面談といった制度が整っていれば、キャリアプランを明確にし、必要なスキルを計画的に磨くことが可能です。
さらに、キャリア相談やメンター制度を通して「次はどんな案件に挑戦したいか」「将来的にどんなエンジニアを目指すか」といった対話ができる環境があれば、キャリアの迷いを減らせます。
このような制度は、エンジニアの長期的な成長を支える上で欠かせない存在です。
(3)プライベートの充実にもつながる
福利厚生は、仕事面だけでなくプライベートの充実にも大きく関わります。
レジャー補助や社員旅行、社内イベントなどがあれば、常駐先では顔を合わせない同僚との交流の機会が増え、「会社の一員としてのつながり」も実感できます。
また、住宅手当・家族手当・育児や介護支援制度といった生活支援の制度は、安心して働くための土台を整えてくれます。
このように、働く時間だけでなく「人生全体を支えてくれる会社」であると感じられる環境があれば、仕事と私生活の両立が実現し、より豊かな日々を送ることができます。
福利厚生が充実しているSES企業の事例

SES企業の中には、社員の働きやすさを重視し、制度を整備することでエンジニアの定着率や満足度を高めている会社があります。ここでは、代表的な5社を取り上げ、それぞれの企業紹介と具体的な福利厚生を見ていきましょう。

AKKODiSコンサルティング株式会社
採用サイト:https://www.akkodis.com/ja/careers
AKKODiSコンサルティング株式会社は、Adecco Group傘下の大手ITコンサルティング企業です。全国規模で数千名のエンジニアを抱え、SES領域だけでなくIT戦略やDX推進にも力を入れています。規模の大きさを活かした教育制度やライフイベント支援制度が整っており、ライフステージの変化に対応できる長期的なキャリア形成を支援している点が強みです。
具体的には以下のような福利厚生があります。
特別休暇制度
年間休日124日に加え、妊活休暇や結婚休暇など、ライフイベントに寄り添った独自の休暇制度を設けています。
時短勤務の長期利用
子どもが小学校卒業まで時短勤務が可能で、長期的に育児と仕事を両立できます。
教育・研修制度
幅広い社内研修に加え、外部研修や資格取得支援を積極的に導入。社員の成長を長期的にサポートしています。
住宅・転勤サポート
全国配属に対応するため、住宅補助や転勤時の手当が整備されており、勤務地変更による負担を軽減しています。
株式会社テクノプロ
採用サイト:https://www.technopro.com/recruit/
テクノプロは、国内最大規模の技術系人材サービス企業で、エンジニア数は2万人を超える業界最大手です。機械・電気電子・IT・建築土木・化学など幅広い分野で事業を展開しており、SESだけでなく研究開発や請負でも存在感を発揮しています。規模の大きさを支える基盤として、福利厚生も業界随一の充実度を誇り、特に住宅支援やキャリア支援制度が強みです。具体的には以下のような福利厚生があります。
住宅・生活支援
借り上げ社宅制度を導入し、単身赴任者には月80,000円の手当を支給。引越費用も全額会社負担で、生活負担を軽減します。
帰省旅費の支給
単身赴任者には定期的な帰省旅費が支給され、家族との時間を確保しやすい環境が整っています。
キャリアデザインアドバイザー制度
経験豊富なエンジニアがキャリア相談に応じる「CDA制度」を導入。長期的なキャリア設計を後押しします。
資産形成支援
確定拠出年金、持株会、財形貯蓄制度などを備え、社員の将来設計を経済面から支えています。
Sky株式会社
採用サイト:https://www.skygroup.jp/recruit/
Sky株式会社は、自社パッケージソフト開発と受託開発の両輪で成長してきた大手IT企業です。教育機関や官公庁、大手民間企業など幅広い顧客基盤を持ち、従業員数は数千人規模に達しています。安定した事業基盤を背景に福利厚生も充実しており、特に多彩な休暇制度と子育て支援が評価されています。厚生労働省から「プラチナくるみん認定」を受けるなど、社会的なお墨付きもある企業です。
具体的には以下のような福利厚生があります。
多様な休暇制度
年間休日120日以上に加え、有給休暇・サマーフレックスホリデー・リフレッシュデー・バースデー休暇など、社員がライフイベントに応じて柔軟に休める環境を整えています。
子育て支援
法定を超える産休・育休制度を設けており、男女問わず育児参加が可能です。国から「プラチナくるみん」認定を受けている点も安心材料です。
住宅・転勤サポート
転勤時には借り上げ社宅を提供し、赴任旅費も会社が負担します。全国に拠点を持つ大企業ならではの手厚いサポートです。
福利厚生サービスの導入
「ベネフィット・ワン」などの外部サービスを利用でき、宿泊施設やスポーツジム、カルチャースクールなどを優待価格で利用可能です。
Saze株式会社
採用サイト:https://saze.co.jp/employment/
Saze株式会社は、SES業界の中でも高いNo.1の給与還元率を維持しつつ、社員のキャリア形成と働きやすさを両立している注目企業です。エンジニアの成長を後押しする仕組みを多数導入しており、スキルアップやキャリア相談を通じて長期的に活躍できる環境を整えています。さらに社員旅行やイベントを通じた交流機会も多く、客先常駐で課題となりやすい「帰属意識の希薄化」を防ぐ取り組みも実践しています。
具体的には以下のような福利厚生があります。
家賃手当・交通費orリモート手当
一人暮らしや実家暮らしに関わらず家賃補助が支給され、生活面をサポートします。通勤定期代を月40,000円まで支給のうえ、通勤定期代が発生しない方へはリモート手当を月7,000円支給など、柔軟な働き方が経済面からも支援されています。
副業制度
事前申請が不要で副業が認められており、SES業界でも珍しい自由度の高さが特徴です。キャリアの幅を広げたい社員にとって魅力的な制度です。
資格取得支援
業務に直結しない資格でも、合格時には受験料と30,000円の手当が支給されます。自主的な成長意欲を応援し、幅広いスキルの獲得を後押ししています。
社員旅行・イベント
年1回の社員旅行は会社が費用をほぼ負担。普段はクライアント企業で離れて働く社員同士の交流を促し、組織としての一体感を育む工夫となっています。
退職金積立制度「福祉はぐくみ企業年金」
福祉はぐくみ企業年金基金(はぐくみ基金)とは、従業員自身が給与の一部を退職金掛金として拠出するか選択ができる制度です。拠出の柔軟性が高いことでライフイベントに合わせて積立ができる退職金制度となっています。
株式会社セイル
採用サイト:https://sail-to.co.jp/recruit/
株式会社セイルは、「社員第一主義」を掲げるSES企業で、エンジニアの定着率を高めるために労働環境と待遇の改善に力を入れています。特に残業時間の少なさやリモートワークの推進など、働きやすさを徹底的に追求する文化が根付いています。給与還元率の透明性も高く、エンジニアが安心してキャリアを築ける環境づくりに注力しています。具体的には以下のような福利厚生があります。
リモートワーク支援
リモートワーク率は約85%を誇り、さらに在宅勤務手当も支給。働く場所に縛られない柔軟な体制が整っています。
ランチMTG支援
月に1~2回程度、会社負担でランチMTGでチーム内の親睦を深めることを推奨しています。
キャリア面談制度
定期的なキャリア面談を実施し、希望する案件や将来像を重視したアサインが行われています。
福利厚生が優良なSES企業の見分け方

SES企業は数多く存在しますが、福利厚生の内容や実態には大きな差があります。求人票には制度が整っているように見えても、実際には使いにくかったり形骸化している場合も少なくありません。ここでは、SES企業を選ぶ際に特に注目すべきポイントを整理し、それぞれの観点から「優良な福利厚生を持つ企業」を見分ける方法を解説します。

制度の具体性を確認する
「住宅手当あり」「資格取得支援あり」といった表現だけでは不十分です。支給額や条件、適用範囲などが具体的に明記されているかを確認しましょう。例えば住宅手当であれば、金額や支給条件(例:勤務地から一定距離内)まで提示されているかどうか。資格取得支援であれば、対象資格や負担範囲(受験料のみ、書籍代も含むなど)まで示されているかどうかが重要です。制度の透明性が高い企業ほど、社員が安心して利用でき、制度が実際に機能している可能性が高いといえます。
年間休日と有給取得率を見る
福利厚生の充実度を測る上で、休日日数は客観的な指標の一つです。日本企業の平均年間休日は約115日とされますが、優良企業は120日以上を確保している傾向があります。加えて、有給休暇の取得率や取得のしやすさも確認しましょう。「有給消化率90%以上」「5日間の連続休暇を奨励」など、実際に運用されている実績の確認が重要です。単なる制度の有無ではなく、実際に社員が休暇を取りやすい雰囲気や文化があるかどうかを口コミや面接の中での逆質問などで確認することも欠かせません。
キャリア形成支援の有無を確認する
SES企業では案件の内容次第で得られるスキルが大きく変わるため、キャリア形成を支援する制度の有無は重要です。定期的なキャリア面談やキャリアアドバイザーの配置、資格取得補助や外部研修の費用負担など、将来につながるサポートが整っているかを確認しましょう。また、社員の希望を尊重して案件を選べる制度があるかどうかも見極めのポイントです。単に「福利厚生が整っている」だけでなく、社員の成長やキャリアアップにつながる仕組みを持つ企業は、長期的に安心して働ける環境を提供しているといえます。
生活支援制度の充実度を比較する
SES企業を比較する際は、住宅手当や通勤費、健康診断、家族向け制度(育休・介護休暇など)といった生活支援制度も重要です。さらに、健康診断のオプション費用を会社が負担する、メンタルケアをサポートする仕組みが組まれているなど、生活や健康を包括的に支える企業は「社員第一」の姿勢が表れています。生活支援制度は長期的な定着率にも直結するため、軽視できない要素です。
本当にホワイトなSES企業を見抜くポイント

福利厚生が充実しているかどうかは大切な要素ですが、それだけで「ホワイト企業」とは言えません。SES企業を見極める際には、制度の有無に加えて企業の経営姿勢や労働環境、キャリア形成のサポート体制まで多角的にチェックする必要があります。ここでは、福利厚生に加えて確認すべき重要なポイントを整理します。

報酬体系の透明性を確認する
SES企業の多くは「還元率○%」とアピールしますが、その内訳をしっかり確認することが重要です。社会保険料や交通費などが差し引かれていないか、最大値ではなく平均値で示されているかを口コミの確認や面接での逆質問を通して見極めましょう。「高還元率」を掲げながら実際には条件付きだったり、賞与を含めた数字だったりする企業も一定存在するため注意が必要です。
キャリア形成支援の体制を重視する
SES企業では、参画する案件次第で得られるスキルが大きく変わります。そのため、社員の希望やキャリアプランを尊重し、案件選択に反映してくれるかという点は、ホワイト企業かどうかを判別する重要な条件の一つです。具体的には、キャリアアドバイザーとの定期面談、資格取得や研修費用の支援、長期的なスキルマップに基づいた成長計画の提示などが挙げられます。これらが整っている企業は、社員を「派遣要員」ではなく「成長していくプロフェッショナル」として扱っている証拠です。
コンプライアンスと労働環境の健全性を見る
SES業界では「偽装請負」や過度な長時間労働といった問題が指摘されることもあります。ホワイト企業を見抜くには、労働時間の管理が徹底されているか、コンプライアンス教育が実施されているかを確認することが大切です。また、スキルシートの内容を本人ときちんとすり合わせているか、クライアント企業先での無理な働き方を防ぐ体制があるかどうかもポイントです。社員を守る仕組みを整えている企業は、結果として定着率や社員満足度が高い傾向にあります。
社内コミュニケーションとサポート体制を確認する
客先常駐が多いSESでは、社内とのつながりが希薄になりがちです。そのため、帰社日や社内イベント、勉強会などを通じて社員同士の交流を促進しているかどうかは重要な判断基準です。また、問題が発生した際に営業担当や人事がすぐに相談に乗り、現場調整を行ってくれる体制があるかも確認しましょう。孤立を防ぎ、社員を組織の一員としてサポートする姿勢がある企業は、安心して働き続けられるホワイト企業である可能性が高いです。
客観的な評価と実績を参考にする
最後に、口コミサイトや第三者の評価を参考にすることも有効です。「案件選択の自由度が高い」「給与還元率の説明が明確」といったポジティブな声が多い企業は信頼度が高まります。ただし、口コミは個人の体験に左右されるため、複数の情報源を照らし合わせることが重要です。また、離職率や有給取得率といった定量的なデータもあわせて確認することで、より客観的にホワイト企業かどうかを判断できます。
よくある質問(FAQ)

Q1.SES企業に住宅手当は多いですか?
A1.導入企業は一定数ありますが、条件や金額は大きく異なります。本社からの距離や勤務地エリアを条件にする場合も多いため、詳細を確認することが重要です。
Q2.待機期間中の給与はどうなりますか?
A2.優良SES企業であれば待機期間中も給与が100%支給され、福利厚生も適用されます。一方で、給与が減額される企業もあるため、契約内容を事前に必ず確認しましょう。
Q3.SES企業でも副業は可能ですか?
A3.企業によって対応が分かれますが、副業を認める企業は増えています。事前申請が必要な場合や、競合他社での勤務を禁止する場合もあるため、規定を確認してください。
Q4.福利厚生が整っている企業を見つけるにはどうすればいいですか?
A4.公式サイトや求人票に加え、口コミサイトや転職エージェントから情報を集めましょう。特に「制度が実際に使われているか」を確認できる情報があると安心です。
まとめ

本記事で紹介したように、福利厚生には「仕事の生産性を高める」「キャリア形成を後押しする」「プライベートの充実を支える」といったさまざまな役割があります。
一方で、SES企業の中には制度が形骸化していたり、実際にはなかなか利用しづらいケースもあります。だからこそ、求人票や面接で制度の実態を確認し、エンジニアが本当に働きやすい環境かを見極めることが大切です。
SES企業における福利厚生は、単なる制度ではなく、その企業がエンジニアをどれだけ大切にしているかを映す鏡です。「案件内容」や「給与」だけで企業を選ぶのではなく、福利厚生という”企業の姿勢”にも目を向けることが、後悔のないキャリア選択につながります。
この記事が、制度を上手に活用できる環境を選び、安心して成長し続けられるSES企業を見つける一助となれば幸いです。