【徹底解説】SES契約とは?請負契約や派遣契約との違いを解説!

SES契約(準委任契約)は、IT業界における一般的な契約形態の一つであり、特にシステム開発や運用業務において広く用いられています。本記事では、SES契約の基本的な仕組みや報酬の決まり方、派遣契約・請負契約との違い、そしてエンジニアにとってのメリット・デメリットを徹底解説していきます。
そもそもSES契約とは?

SES契約とは、SES企業が自社のエンジニアをクライアント企業に常駐させ、技術提供を行う契約形態です。この契約では、エンジニアはSES企業に雇用される一方で、クライアント企業の現場に出向き、日々の業務を遂行します。
特徴的なのは、業務の成果に対する責任を負う請負契約とは異なり、SES契約は「労務提供」を目的とした契約である点です。クライアント企業からエンジニアに直接の指揮命令はできず、法律上は派遣契約とは区別されています。
クライアント企業の現場における業務内容は、アプリケーション開発、システム運用、インフラ構築、保守対応、テスト支援など多岐にわたり、案件によって求められるスキルや知識が異なるのも特徴です。
派遣契約・請負契約との違い

SES契約は、派遣契約や請負契約と並び、外部人材を活用するための代表的な契約形態ですが、それぞれに明確な違いがあります。ここでは、それぞれの契約形態について、指揮命令系統・責任範囲・雇用関係の3つの視点から比較し、違いを解説します。

SES契約
SES契約では、エンジニアはSES企業の正社員として雇用され、クライアント企業に常駐します。法律上、エンジニアはクライアント企業から直接の指揮命令をは受けず、業務指示はSES企業を通して行われる建前となっています。ただし、実務上は現場のスムーズな進行を目的に、クライアントから直接指示が出るケースも少なくありません。この点が「偽装派遣」と誤認されやすい要因の一つです。
派遣契約
派遣契約では、エンジニアは派遣元企業の社員でありながら、クライアント(派遣先)企業の指揮命令下で業務を行います。指揮命令権がクライアント企業にあるため、日々の業務指示や労働時間管理などはすべて派遣先企業が行います。派遣契約は「労働者派遣法」に基づいて管理されており、法令遵守の観点から契約期間や内容に制限があります。
請負契約
請負契約は、エンジニアではなく企業(請負元)が成果物に対して責任を持つ契約です。業務の完成に対して報酬が発生し、クライアント企業は進捗や成果に対してのみ関与します。作業手順や技術指導などをクライアントが行うことは原則としてできません。そのため、実際の作業現場においても、請負企業がすべての指示・管理を行う必要があります。
このように、それぞれの契約形態には指揮命令権や成果責任の所在に明確な違いがあり、実務の進め方や法的責任の範囲が異なります。SES契約は請負契約 / 派遣契約の中間的な位置づけにあるともいえ、現場では派遣に近い実態を持ちつつも、形式上は請負契約と異なる存在として活用されています。
SES契約のメリット

ここまでSES契約と請負契約、派遣契約の違いについて述べてきましたが、続いてはSES契約における、エンジニア自身のメリットについて解説をしていきます。

スキルの棚卸しがしやすい
SES契約では、案件ごとに役割が明確に定義されることが多く、自身の「できること」「できなかったこと」を把握しやすいメリットがあります。自身のキャリアを定期的に見直す良い機会となり、SES企業でさらなる実務経験を積むことはもちろん、今後のキャリアの指針を見つけるきっかけにもなり得ます。
実務経験を積みやすい
未経験や若手エンジニアにとっては、早期に実務の現場に出られることは大きなメリットです。実務の中での学びは座学以上に価値があり、転職市場でも評価されやすいためSES契約における非常にポジティブな点の一つと言えます。
さまざまなクライアント企業の文化や技術に触れられる
さまざまなクライアントの元で働くことにより、業界ごとの風土や最新技術に触れるチャンスも増えます。結果として、自身の市場価値を高めることにもつながります。
自社でのキャリア支援制度がある場合も
優良なSES企業では、キャリアパスの相談や研修制度、勉強会などが整備されており、継続的な成長をサポートしてくれる環境が用意されています。
SES契約のデメリット

SES契約には利点がある一方で、注意すべき課題やリスクも存在します。以下に、デメリットの詳細を解説します。

キャリア形成が不安定になりがち
案件ごとに業務内容や技術領域が変わるため、場合によっては長期的なキャリアの一貫性が保ちづらくなります。自身の意思と関係なく希望しない案件にアサインされることも企業によってはあるので、自身が希望するキャリアパスから逸れる可能性もあります。
現場ごとの環境格差が大きい
常駐先となるクライアントによって働きやすさ・チームの文化・使用技術などに大きな差があるため、「良い現場」「悪い現場」の差がしばしば生じます。特に旧来型の技術体制や紙文化が残る現場ではストレスを感じやすいです。
帰属意識やサポートの希薄化
クライアントの元で長期間働くことで、自社の社員としての帰属意識が薄れやすくなります。帰社日やフォロー体制が整っていない企業では、孤独感や疎外感を感じることも少なくありません。
評価制度が曖昧
評価がクライアントの意向に左右されやすく、それが昇給・昇格にどうつながるのかが不透明な企業も存在します。これによりモチベーションの維持が難しくなるケースもあります。
SES契約の報酬の決まり方

前提として、SES契約における報酬は「人月単価」または「時給」で設定されることが一般的です。たとえば、「人月単価60万円」で契約された場合、クライアント企業は毎月60万円をSES企業に支払います。この金額にはエンジニアの給与、社会保険料、営業手数料、企業の利益などが含まれています。
また、SES契約における報酬の大小には、以下のような要素が関わってきます。
- エンジニアの経験年数・スキルセット
- 業務の難易度や役割(設計〜開発〜テストなど)
- 常駐先の企業の業種や地域
- 稼働日数や時間(残業の有無など)
そのため、同じ案件やSES企業でもエンジニア自身の経験や職種によって報酬に差が出ることがあります。
また、エンジニア個人の報酬は上記のSES契約における報酬から、「SES企業の取り分」を差し引いた金額となります。
- SES契約におけるクライアントからの月報酬:70万円
- SES企業の取り分(営業利益・管理費):28万円(40%)
- エンジニアの月給(額面):42万円(60%)
※上記は賞与がない会社です
※上記月給に加えて、半期 / 通期など特定タイミングで賞与が支払われるケースもあります。
企業によっては、単価を開示してくれるところもあれば、開示しない企業もあります。単価開示の有無や還元率(どれだけ自分に反映されるか)は、SES企業を選ぶ際の重要な判断材料です。
よくある質問

Q1. SES契約は違法ではないの?
A. SES契約自体は違法ではありません。ただし、実態が派遣契約と変わらない場合は「偽装派遣」と判断される可能性があります。
Q2. SES契約と正社員雇用の違いは?
A. SES契約は雇用形態ではなく、契約形態です。エンジニア自身はSES企業の正社員であるケースが多いです。
Q3. SES企業で働くメリットはある?
A. 様々な現場で実務経験が積めるといったメリットがありますが、企業選びが重要です。
Q4. 転職時にSES経験は評価される?
A. IT業界およびエンジニア関連職種への転職においては、実務経験がしっかりしていれば十分に評価されます。
まとめ

SES契約は、ITエンジニアにとって多様な現場での経験を積める貴重な働き方の一つです。報酬体系や契約内容の仕組み、派遣契約・請負契約との違いを正しく理解することは、自身のキャリア形成や転職戦略を考える上で非常に重要です。メリットとしては、スキルの幅を広げやすく、現場経験を重ねることで市場価値を高められる点が挙げられます。一方で、現場によっては環境や業務内容にバラつきがあり、キャリアの方向性がぶれやすいデメリットも存在します。これらを踏まえ、企業選びと契約内容の確認を慎重に行い、自分に合った働き方を見つけることが大切です。