SES企業におけるインフラエンジニアとは?仕事内容やメリット・デメリットを徹底解説!

現代社会において、ITシステムはあらゆる業界・企業の根幹を支える存在となっています。その中核を担うのが、ITインフラの設計・構築・運用を担当する「インフラエンジニア」です。特に、SES(SystemEngineeringService)という働き方を通じて活躍するインフラエンジニアも多く、キャリアの選択肢として注目を集めています。
一方で、「SESのインフラエンジニアって実際どうなの?」「キャリアアップできるの?」と不安を感じている方も少なくないでしょう。本記事では、SES企業におけるインフラエンジニアの仕事内容や、働くメリット・デメリット、そして優良なSES企業の見極め方まで徹底的に解説します。
1.インフラエンジニアとは

まずはじめに、インフラエンジニアとはどのような職種なのか、その基本的な役割と仕事内容について解説します。
インフラエンジニアとは、ITシステムの基盤を支える専門家のことを指します。私たちが日常的に利用するWebサイト、アプリケーション、メール、社内システムなどが安定して動き続けるために、その土台となるサーバー、ネットワーク、データベースなどを設計・構築し、安定稼働するように運用・保守するのが主な役割です。
インフラエンジニアの仕事は、大きく以下の4つのフェーズに分けられます。

(1)要件定義
要件定義は、クライアント企業が抱える課題や要望をヒアリングする最初のステップです。可用性、パフォーマンス、セキュリティレベルなど、新しいインフラが満たすべき条件をここで明確に定義します。
(2)設計
設計は、要件定義で定められた内容を元に、それを技術的にどう実現するかを具体的に決めるステップです。サーバーの台数やスペック、ネットワークの構成、使用するソフトウェアなどを選定し、詳細な設計書を作成します。
(3)構築
設計書に基づき、実際に機器の設置や設定作業を行います。サーバーOSのインストール、ネットワーク機器の設定、クラウド上での仮想サーバーの構築などが具体的な作業内容です。
(4)運用・保守
構築したインフラが安定して稼働し続けるように管理するフェーズです。サーバーやネットワークに異常がないか監視し、障害が発生した際には復旧作業を行います。また、定期的なメンテナンスやセキュリティパッチの適用、パフォーマンスの改善なども担当します。
近年では、物理的なサーバーやネットワーク機器を自社で保有するオンプレミス環境だけでなく、AWS(AmazonWebServices)やAzure(Microsoft Azure)MicrosoftAzure、GCP(GoogleCloudPlatform)といったクラウド環境を扱う機会が急増しています。そのため、インフラエンジニアには、従来の知識に加えて、最新のクラウド技術に関するスキルも求められるようになっています。
※オンプレミス…自社内にサーバーやネットワーク機器を設置・運用する方式
※クラウド…インターネットを通じてサービス事業者のサーバーを使用する方式
2.SES企業で経験できるインフラエンジニアの仕事内容

SES(SystemEngineeringService)とは、エンジニアがSES企業にて正社員として雇用されながら、クライアント企業に常駐してその技術力を提供する契約形態です。この働き方におけるSES企業のインフラエンジニアは、どのような業務に携わるのでしょうか。
ここではそのSES企業におけるインフラエンジニアが、経験年数やスキルレベルに応じて、どのような仕事内容が経験できるのか、その一例を解説していきます。

未経験・若手向けの案件例(経験1~2年)
多くのSES企業は未経験者向けの研修制度を設けています。最初は基礎的な業務から担当し、徐々にスキルアップを目指します。
・運用・監視
システムが正常に稼働しているかを監視ツールでチェックし、アラートが発生した場合にマニュアルに沿って一次対応を行います。夜勤やシフト制勤務が含まれることも多いですが、ITインフラの全体像を学ぶ上で重要な経験となります。
・ヘルプデスク・テクニカルサポート
社員や顧客からのITに関する問い合わせに対応します。PCのトラブルシューティングやアカウント管理などが主な業務です。
・キッティング
PCやサーバーの初期設定、ソフトウェアのインストールなどを行います。

中堅者向けの案件例(経験3~5年)
基礎的な知識と経験を積んだ中堅エンジニアは、より専門性の高い構築フェーズの案件に携わる機会が増えます。
・サーバー・ネットワーク構築
オンプレミス環境での物理サーバーのラッキング、OSのインストール、仮想化基盤の構築、ネットワーク機器の設定など、設計書に基づいた構築作業を担当します。
※ラッキング…サーバーなどのIT機器を専用の棚(ラック)に設置し、使用可能な状態にすること
・クラウド環境構築
AWS、Azure、GCPといったクラウドプラットフォーム上で、仮想サーバーやネットワーク(VPC)、データベース(RDSなど)を構築します。
・ミドルウェアの導入・設定
Webサーバーやデータベースなどのミドルウェアのインストールと設定を行います。

上級者向けの案件例(経験5年以上)
豊富な経験と高度な専門性を持つエンジニアは、プロジェクトの上流工程や、より先進的な技術領域を担います。
・要件定義・設計
クライアント企業のビジネス要件をヒアリングし、インフラ全体の構成を設計する最上流工程を担当します。可用性、パフォーマンス、セキュリティなどを考慮した高度な設計能力が求められます。
・セキュリティコンサルティング
クライアント企業の機密情報や重要インフラを守るため、セキュリティの専門家としてコンサルティングを提供したり、高度なセキュリティインフラの設計・実装・運用を主導します。
特に個人情報を取り扱うシステムや金融機関など、外部への持ち出しが禁じられている情報を扱う案件では、高水準のセキュリティ知識と経験が不可欠であり、月100万円を超える高単価が提示されることも珍しくない、SES企業でも需要の高い分野です。
このレベルの業務では、技術力だけでなく、コミュニケーション能力やプロジェクトを前進させるリーダーシップも高く評価されます。
・クラウドネイティブインフラの設計・自動化
DockerやKubernetesなどのコンテナ技術や、Terraform、Ansibleを用いたIaCによるインフラ構成管理の自動化を主導します。クラウド環境設計やインフラ自動化スキルを持つエンジニアは特に需要が高く、上級者向けと言えます。
このように、SES企業のインフラエンジニアは、自身のスキルレベルやキャリアに応じて、多種多様なプロジェクトに挑戦できる可能性があります。しかし、案件が自由に選べない、スキルアップの方向性が見えにくいといったデメリットも中には存在しています。
続いては、インフラエンジニアが実際にSES企業で働く上でのメリット/デメリットをそれぞれ解説していきます。
3.インフラエンジニアがSES企業で働くメリット

SES企業での働き方には、「常駐」や「自由に案件を選べない」といったネガティブな印象も先行しがちですが、実はインフラエンジニアにとって多くのメリットも存在します。特に、キャリア初期の段階でさまざまな現場を経験できることや、大規模システムの裏側に触れられる機会が多い点は、他の働き方では得られない魅力です。ここでは、SES企業で働くインフラエンジニアだからこそ享受できる代表的なメリットについて、具体的に解説します。

多様なインフラ環境に触れられる
インフラエンジニアがSES企業で働く最大のメリットは、多様なインフラ環境に触れられる可能性がある点です。インフラ技術は、オンプレミス(自社運用)かクラウドか、どのベンダーの機器(Cisco,Juniper,etc.)を使うか、どのクラウド(AWS,Azure,GCP)を使うかなど、現場によって構成が全く異なります。SES企業においては、比較的短期間でデータセンターや最新のクラウド環境など、通常の一つの企業では経験できないほど多様なインフラに実務で関われる可能性があります。
未経験からでも挑戦しやすい
インフラエンジニアは専門性が高い職種ですが、SES業界においては未経験者の採用と育成に積極的なSES企業が多いのが特徴です。すべてのSES企業が対応しているわけではありませんが、多くのSES企業が独自の研修プログラムを用意しており、ITの基礎からサーバー、ネットワークの知識までを学んだ上で、運用・保守といった比較的エントリーレベルの案件からキャリアをスタートさせる仕組みを作っているケースもあります。「まずはIT業界に入ってインフラエンジニアとしての実務経験を積みたい」と考える人にとって、SES企業は有効な入り口の一つです。
大規模システムの運用経験が積める
エンジニア自身が所属するSES企業が中小規模だとしても、金融機関や通信キャリアといった大企業がクライアント企業の場合、大規模システムの運用・保守プロジェクトに参画できるチャンスがあります。大規模環境ならではの運用手順、障害対応、セキュリティポリシーなどを肌で学べるのは、非常に貴重な経験です。
4.インフラエンジニアがSES企業で働くデメリット

一方で、SES企業という働き方には避けられないデメリットも存在します。以下では、SES企業で働く際に注意すべき主なデメリットを整理します。

運用・保守業務に固定化されてしまうリスク
案件によっては、設計などの重要な役割はクライアント企業が担当し、監視アラートの一次対応、定型的なバックアップ作業、アカウント発行といった手順書通りのオペレーター業務だけを長期間担当させられるリスクがあります。そのため、上流工程であるインフラの設計や構築に全く関われず、スキル停滞につながってしまうケースも中には存在します。
キャリアパスがコントロールしにくい
この点はインフラエンジニアに限りませんが、前提としてSES企業におけるエンジニアのキャリアは、どの案件にアサインされるかに大きく左右されます。営業力が弱かったり、エンジニア個人のキャリアプランを軽視するSES企業だったりすると、自身の希望とは異なる案件や、スキルアップに繋がらない単純作業の案件を長期間続けさせられるリスクがあります。また、評価者がクライアント企業にいるわけではないため、現場での頑張りや成果が自社の評価に正しく伝わらず、適切なキャリアパスを提示してもらえないケースもあります。
帰属意識の低下と孤独感
長期間クライアント企業に常駐していると、所属するSES企業との関わりが希薄になりがちです。定期的な帰社日や社内イベント、担当営業との密なコミュニケーションなど、所属企業との繋がりを保つ仕組みが整っていない企業では、この傾向がより強くなります。
これらのデメリットは、どのSES企業に所属するかによっても大きく左右されるため、このあと紹介する優良なSES企業の見極め方を確認しましょう。
5.優良なSES企業の見極め方

SES企業においてインフラエンジニアとして成長するためには、所属する企業選びが非常に重要です。ここでは優良なSES企業の見極め方として、大きく分けて4つのポイントを解説します。
※本セクションでは、インフラエンジニアに限らず、SES企業を見極めるうえでの重要なポイントを重点的に解説しています。

①還元率の高さと評価制度の透明性
エンジニアの単価のうち、どれくらいの割合が給与として支払われるかを示す「還元率」は、最も重要な指標の一つです。SES企業のWebサイトや面接の場で、還元率を明示しているか、あるいは単価と給与の連動表を公開しているかを確認しましょう。評価制度が明確で、どのようなスキルを身につければ単価と給与が上がるのかが可視化されているSES企業は、信頼性が高いと言えます。
②案件選択の自由度と営業力
エンジニア本人の希望をヒアリングし、キャリアプランに沿った案件を提案してくれるか、エンジニアが案件を選択できる制度があるかは必ず確認しましょう。面接では、具体的な案件例やクライアント企業について質問し、多様な選択肢を提供できるSES企業かどうかを見極めましょう。
③教育・研修制度の充実
エンジニアの成長に投資する姿勢があるかどうかも重要なポイントです。資格取得支援制度、外部研修費用の負担、社内勉強会の開催実績などを確認しましょう。特にクラウド技術やセキュリティ、IaCといった最新技術に関する学習機会を提供しているSES企業は、エンジニアの市場価値向上を強く意識している証拠と言えます。
④キャリアサポート体制
現場での悩みや将来のキャリアについて、気軽に相談できる体制が整っているかを確認しましょう。営業担当者が定期的に現場を訪問して面談を行っているか、あるいは専門のキャリアカウンセラーが在籍しているかなどがチェックポイントです。
よくある質問

最後に、SES企業のインフラエンジニアを目指す方からよく寄せられる質問にお答えします。
Q1.未経験からでも、本当にSES企業のインフラエンジニアになれますか?
A1.可能です。多くのSES企業がポテンシャルを重視した未経験者採用を行っており、充実した研修制度を用意しています。ただし、入社後の学習意欲は不可欠です。事前にネットワークの基礎知識を証明するCCNAといった資格を取得しておくと、選考で有利に働くでしょう。
Q2.SES企業で経験を積んだ後のキャリアアップは可能ですか?
A2.可能です。多様なキャリアパスが考えられます。SES企業で様々なプロジェクトを経験してスキルを磨いた後、下記のようなキャリアアップが期待できます。
・より条件の良い優良SES企業に転職する
・事業会社の社内SEに転職し、特定システムの企画・運用に深く携わる
・フリーランスのインフラエンジニアとして独立し、高単価案件を狙うといった選択肢があります。また、所属するSES企業内で、プロジェクトリーダーやマネージャーといった管理職を目指す。
Q3.「客先常駐」と聞くと不安です。実態はどうなのでしょうか?
A3.クライアント企業による差が非常に大きいのが実情です。優良なSES企業は、エンジニアが安心して働けるように、コンプライアンスを徹底し、労働環境のチェックや定期的なフォローを行っています。面接の際には、「営業担当のフォロー体制は具体的どうなっていますか?」「クライアント企業で問題が起きた場合、どのような対応をしてもらえますか?」といった質問を投げかけ、エンジニアを守る姿勢があるかを確認することが重要です。不安な点を率直に質問し、誠実な回答が得られる企業を選びましょう。
7.まとめ

本記事では、SES企業におけるインフラエンジニアという働き方について、その仕事内容からメリット・デメリット、そして優良な企業の見極め方まで解説してきました。
SES企業のインフラエンジニアは、多様なプロジェクトに携わることで幅広い技術と経験をスピーディーに身につけられる魅力的なキャリアパスの一つです。
一方で、給与が上がりにくかったり、キャリアが会社の都合に左右されたりといったデメリットが存在するのも事実です。インフラエンジニアの実態として、この働き方が成功するかどうかは、どのSES企業に所属するかに大きく依存します。
これからSES企業でインフラエンジニアを目指す方は、本記事で紹介した優良なSES企業の見極め方を参考に、企業の表面的な情報だけでなく、その本質を見抜く視点を持って就職・転職活動に臨んでください。