【最新・詳細解説】SESにおけるマージン率とは?還元率や給料にどう影響する?

SES(システムエンジニアリングサービス)業界で働く上で、「マージン率」を理解することは非常に重要です。クライアントが支払う報酬と、自分の手取り額との間には必ず差があり、「会社にどれだけ差し引かれているのか」「このマージン率は適正なのか」といった疑問や不満を、多くのエンジニアが一度は抱くものです。
本記事では、SES企業におけるマージン率の仕組みや還元率との関係、そしてエンジニアの給料に具体的にどのような影響を与えるのかを詳しく解説します。
SESにおけるマージン率とは

SESにおけるマージン率とは、クライアント企業がSES企業に支払う報酬(人月単価)のうち、SES企業が得る割合を指します。
このマージンは単なる利益ではなく、事業継続やエンジニアが安心して働くための経費に充てられます。主な使い道は以下の通りです。
- 本社スタッフの人件費
- 社会保険料(会社負担分)
- オフィス維持費
- 福利厚生費
- 教育・研修費
- 採用・広告費
- 待機期間中の給与保証
SESにおける還元率とは

マージン率と対になる指標が「還元率」です。
還元率とは、クライアント企業がSES企業に支払う報酬(人月単価)のうち、給与としてエンジニアに還元される割合を示します。ただし計算方法は会社によって異なり、統一された基準はありません。
「高還元SES」を掲げる企業では、「還元率70%以上」などと数字で明示することが多いですが、その計算根拠(平均値なのか最大値なのか、交通費などの経費も含まれるかどうかなど)も確認することが大切です。一般的に還元率が高いほど給与水準は高くなる傾向があります。
マージン率と還元率の関係

マージン率と還元率は、SES企業における収益構造を理解する上で切っても切れない関係にあります。両者を足し合わせると、クライアント企業から支払われる人月単価の総額、つまり100%になります。
人月単価(100%)= マージン率 + 還元率
この計算式からも明らかなように、マージン率が低ければ低いほど、還元率は自然と高くなります。例えば、マージン率が25%の企業であれば、残りの75%がエンジニアに還元される計算です。一方、マージン率が50%であれば、還元率は50%となり、同じ人月単価でも給与額は大幅に下がります。
ただし、ここで注意すべきは「単純にマージン率が低ければ良い企業」とは限らないということです。企業のマージンには、営業活動や案件獲得に必要なコスト、福利厚生や研修費、待機期間中の給与補償などが含まれています。マージンを低く設定しすぎると、これらのサポート体制が手薄になる可能性があり、結果的にエンジニアのキャリア形成や案件の安定性に悪影響を及ぼすこともあります。
マージン率は給料に影響する?

マージン率はエンジニアの給与を決定づける、極めて大きな要因です。人月単価が同じでも、マージン率の違いによって手取りは大きく変わります。
例えば、同じスキルを持ち、人月単価80万円で契約している場合でも、企業のマージン率によって以下のような差が生まれます。
※簡易説明のため省略していますが、エンジニアへの報酬=手取りとは限りません。税金はもちろん、交通費や福利厚生費などが差し引かれるSES企業も存在します。
ケース①:低マージン企業(25%)
- マージン額(人月単価×マージン率):80万円 × 25% = 20万円
- エンジニアへの報酬:60万円/月
- 年間のエンジニアへの報酬:720万円
ケース②:一般的な企業(40%)
- マージン額(人月単価×マージン率):80万円 × 40% = 32万円
- エンジニアへの報酬:48万円/月
- 年間のエンジニアへの報酬:576万円
ケース③:高マージン企業(55%)
- マージン額(人月単価×マージン率):80万円 × 55% = 44万円
- エンジニアへの報酬:36万円/月
- 年間のエンジニアへの報酬:432万円
この3つの例を比べると、低マージン企業と高マージン企業では年間288万円の差が生じます。
また、マージン率の高さは、企業がどの程度エンジニアに還元する姿勢を持っているかを示す一つの目安になります。もちろん、高マージンでも人月単価が極めて高く、結果的に給与が十分高い場合もありますが、多くの場合はマージン率の高さ=手取りの低さに直結します。そのため、SES企業を選ぶ際には、この数値を必ずチェックすることが必要です。
より給料の高いSES企業に入るためには

SES業界で給与を上げるためには、単に運良く高単価案件に配属されるのを待つのではなく、自分で企業や案件を見極め、戦略的に選び取ることが重要です。ここでは、より高収入を得られるSES企業に入るための具体的なステップを、順を追って解説します。

STEP1:自分の市場価値を把握する
まずは、自分がこのSES市場でどれだけの単価で評価されるかを知ることが出発点です。単価が公開されている企業であれば、それを基準にできますが、非公開の場合は要注意です。単価非公開は、企業が高いマージンを隠している可能性もあります。
把握するための手法として一例ですが、 IT特化型の転職エージェントは有効と言えます。使用言語、経験年数、マネジメント経験などをエージェントへ提示すれば、客観的な市場価値(概算での単価)を知ることができます。
STEP2:高収入を得やすいSES企業を見極める
市場価値を把握したら、次はその価値を活かせるSES企業を知る必要があります。この段階では、数字や制度の透明性、案件の質といった要素を多角的に比較し、「長期的に収入を伸ばせるか」という視点で企業を評価しましょう。
主なポイントは下記の3つです。
見極めるべき3つのポイント
- 還元率を具体的な数字で公表しているか、開示してもらえるか
「頑張りを評価します」など曖昧な表現ではなく、「還元率75%以上」など明確な数字を掲げている企業を選びましょう。ただし「還元率非公開」が必ずしも低還元率とも限りません。選考の過程で開示してくれる企業もあるので、公表もしくは開示してくれる企業を選ぶことで、入社前後のギャップを埋めることが重要です。
- 単価と評価制度の透明性
単価を公開していないか、入社後も単価非公開の企業は注意が必要です。誠実な企業は評価制度や単価決定の基準をオープンにする傾向です。
- 案件の質と将来性性
高還元率でも低単価案件しか扱っていない企業では意味がありません。上流工程や最新技術を扱う高単価案件を安定的に確保しているかを確認しましょう。
STEP3:戦略的に転職活動を進める
転職活動は受け身ではなく、自分の条件に合う企業を能動的に探し、アプローチすることが成功の鍵です。
戦略的に転職活動を進めるための3つの行動


1. エージェントを上手く活用する
転職エージェントは、求人を紹介してもらうだけの存在ではありません。まずは希望条件(例:還元率70%以上、単価公開)を具体的に伝えることで、紹介される企業の精度が高まります。
また、希望条件だけでなく「避けたい条件」も併せて伝えることが重要です。例えば、「単価非公開の企業は除外してほしい」「研修制度がない企業はNG」など、マイナス条件も明確にしておくとミスマッチを防げます。さらに、エージェントには複数登録し、同じ希望条件を伝えることで、情報の偏りを減らし、比較材料を増やすことができます。
2. スキルシートをブラッシュアップする
スキルシートは、ただ経験を時系列で並べるだけでは不十分です。市場価値を高く見せるためには、成果や貢献を具体的な数値や事例で示すことが重要です。
例として、「クラウド移行プロジェクトを担当」ではなく、「クラウド移行によりサーバーコストを30%削減」「5名チームのリーダーとして納期を2週間短縮」など、数字や効果を盛り込むことで説得力が増します。さらに、最新の技術習得や資格取得など、自分のスキル向上の取り組みも記載すると、将来性をアピールできます。
3.面接で”企業側を評価する”視点も忘れない
面接は、企業に評価される場であると同時に、自分が企業を評価する場でもあります。一方的に質問に答えるだけでなく、気になる点は積極的に質問し、企業の透明性や将来性を見極めましょう。
特に、給与体系や評価制度、案件獲得力は必ず確認したい項目です。例えば、「評価はどのような基準で行われますか?」「案件単価はどのように決定されますか?」「上流工程や最新技術案件の割合はどのくらいですか?」といった質問を用意しておくと、入社後のギャップを減らせます。
よくある質問

Q.マージン率が低い企業は必ず優良企業ですか?
A.必ずしもそうではありません。営業力や福利厚生の不足、案件の質の低さにつながる場合もあります。
Q.還元率は交渉できますか?
A.企業によりますが、高スキル人材や希少経験者は交渉の余地があります。
Q.SES企業から転職すべきでしょうか?
A.SES企業自体が悪いわけではありません。優良企業を選べばキャリアアップも可能です。
Q.マージン率はどうやって調べられますか?
A.企業の公開資料や求人票、または転職エージェントを通じて確認できます。
Q.高還元率なのに給料が低いのはなぜですか?
A.案件単価自体が低い場合や、計算方法に手当・賞与が含まれていない場合があります。
Q.待機期間があると還元率は下がりますか?
A.多くの場合、待機期間中も給与保証があるとマージン率が高くなり、還元率は相対的に下がります。
まとめ

SESにおけるマージン率は、エンジニアの給与水準や将来の年収に直結する極めて重要な要素です。契約単価からどれだけの割合が会社に渡り、どれだけが自分に還元されるのかを理解することで、企業選びの判断精度は格段に向上します。
特に注意すべきは、数字の見かけだけに惑わされないことです。マージン率が低くても案件単価自体が低ければ収入は上がりませんし、還元率が高くても計算方法によっては実質的な手取りが少なくなる場合もあります。そのため、企業が提示するマージン率や還元率の根拠、案件の質や獲得力、福利厚生や教育制度なども総合的に確認することが大切です。
マージン率・還元率・案件の質という3つの軸を常に意識し、情報収集と比較検討を怠らないことが、満足度の高いキャリア構築への近道となるでしょう。