【徹底解説】 SESは楽って本当?“ゆるく働きたい”人が知るべき現実と落とし穴とは

「SES企業は楽だ」といった声を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。実際に働く場所によっては、業務負荷が少なくストレスの少ない環境も存在します。しかし一方で、「楽だからこそ落とし穴も多い」という現実もあります。本記事では、SES企業での働き方の特徴を整理しつつ、なぜ“楽”と言われることがあるのか、そしてその裏にあるリスクや後悔ポイントについて徹底的に解説していきます。
そもそもSES企業ではどんな働き方になる?

SES(システムエンジニアリングサービス)企業とは、ITエンジニアが自社に在籍し、その技術力をクライアント企業に提供する事業形態です。基本的に客先常駐となるため、働く場所は自社ではなくクライアント企業となるのが特徴です。
この働き方は、様々な技術に接しつつ現場経験を積める上では有益ですが、職場での関係値の築きにくさや、業務内容が多岐にわたりキャリアパスが不明瞭となり得ることがデメリットと言われることもあります。
なぜ「SESは楽」と言われることがあるのか?

「SESは他の働き方より楽そう」「未経験でも案件が多いらしい」「残業が少ない」──こうしたイメージがSESに対して寄せられるケースがあります。一律に”楽”と評するには語弊がありますが、実際に案件によっては“楽”と言われるような現場もあり、このような印象につながっているようです。
ここでは、その背景や業界構造、現場の実情をもとに詳しく解説します。

1. 責任の重さが限定されている案件が多い
SESエンジニアは、自社のプロジェクトではなく客先常駐する形で業務を行います。多くの場合、請負契約ではなく準委任契約となっており、成果物の納品責任は追わず「時間に対して業務を遂行する」ことが求められます。
このため、プロジェクトの成功や納期遵守の最終的な責任はクライアント企業側にあり、SESエンジニアはその中の一部分をサポートする立場となります。特に大規模な保守運用チームやテストチームにアサインされた場合、「設計」や「意思決定」を任されることはほとんどなく、比較的精神的なプレッシャーが少ないという意見が多く見られます。
2. 単純作業・定型業務の案件が存在する
SESの案件の中には、未経験者を対象とした“簡易業務”が数多く存在します。例えば以下のような業務は「楽」と言われやすい代表例です。
- システム監視(サーバーダウン時のアラート確認と報告)
- マニュアルに沿ったテスト業務(テスト項目の実施と記録)
- ヘルプデスク(FAQを元に問い合わせ対応)
- アカウント発行・アクセス権管理などの運用業務
これらの業務は、業務フローやマニュアルが整備されており、臨機応変な判断や高度なスキルを求められることが少ないため、精神的にも肉体的にも“負荷が低い”と感じる人が多くなります。
3. 定時退社がしやすい環境も多い
SESエンジニアが常駐する際には、SES企業側もしくはクライアント企業側で就業時間や働き方に厳密なルールが設けられているケースが多々あります。そのためSESエンジニアに対して残業を強制しづらいという背景もあり、次のような現場が実際に存在します。
- クライアント企業が「残業抑制」に厳しい方針を持っている
- 作業範囲が限定されているため、日中に完結する業務が基本
- 稼働上限時間が契約で定められている
その結果、「毎日17時に退社できる」「ほぼ残業なし」という体験をするSESエンジニアも多く、「SES=ワークライフバランスが取りやすい」という認識につながります。
楽なSES企業って本当にある?実際のエンジニアの口コミ

「本当にそんなに楽な現場なんてあるの?」と思う方も多いでしょう。ここでは、実際に“楽なSES案件”に配属されたエンジニアの体験談をいくつか紹介します。

30代・男性/テスト自動化案件
自動テストが中心の現場で、コードを書くよりもツール操作やレポートの提出がメイン。週3でリモートが認められており残業もほぼなし。評価制度もゆるく、正直かなり楽です



20代・女性/社内ヘルプデスク業務
常駐先でヘルプデスクを任されていますが、電話対応も1日数件だけ。マニュアル通りに答えればよく、トラブルも少ない。精神的な負荷は非常に少ないです



40代・男性/手順書通りの運用業務
既存システムの監視が中心で、夜間は業務なし。決まった手順を淡々とこなすだけなので、スキルアップにはならないけど、体力的には非常に楽です
このように、実際に“楽”と感じているSESエンジニアも一定数存在します。ただし、この「楽さ」が本当に良い選択だったのかどうかは、次のセクションで深掘りしていきます。
楽な案件に共通する特徴と注意点


SES企業における“楽な案件”には、いくつか共通する特徴があります。一見すると理想的に思えるかもしれませんが、注意すべき点も多く存在します。


単純作業が中心
多くの“楽な現場”では、ルーチン化された単純作業が中心です。例えば、マニュアルに沿った問い合わせ対応や、スクリプトを動かすだけの業務など。こうした業務は習得も早く、負荷が少ないため非常に楽と感じられますが、その反面で技術的な学びが少なく、将来的なスキル形成に不安が残ることも。職務経歴書においてもアピールしにくい内容となり、キャリアアップの観点では大きなマイナス要因になり得ます。
責任範囲が狭い
SES企業の“楽”な案件では、開発プロジェクトの上流工程には関わらず、指示されたタスクのみをこなすスタイルが多いです。トラブル時も責任を持たずに済むことが多いため精神的には楽ですが、仕事に対して当事者意識が持てなくなり、やりがいを感じづらくなる可能性もあります。また、評価制度が曖昧なSES企業では、責任の軽い業務を続けることで給与や昇進のチャンスも失われがちです。
長期的な配属が多い
業務が安定している案件は、現場も長期化する傾向があります。一見すると職場が変わらないことは安心材料になりますが、同じような業務を何年も繰り返すことで、スキルや知見がアップデートされず、「他の職場で通用しない人材」になってしまうリスクがあります。特に年齢が上がるにつれ、キャリアの転換が難しくなるため注意が必要です。
技術的な挑戦が少ない
“楽”な現場では、既に整備されたシステムの運用や監視業務が中心になるケースが多く、新しい技術に触れる機会がほとんどありません。最新のフレームワークやツールを使った経験が積めず、エンジニアとしての市場価値が低下してしまう危険性もあります。今は楽でも、将来の選択肢が狭まるリスクを考慮する必要があります。
楽すぎて後悔するケースはある?


「楽だから」と選んだSES案件が、後に後悔の元になるケースも珍しくありません。ここでは、よくある後悔パターンを紹介します。


転職市場で評価されない
長期間にわたって単純作業しかしてこなかった場合、転職市場では「市場価値の低い人材」として見なされる可能性があります。特に、自社開発や技術志向の企業を希望する場合、「技術力が不足している」「成長意欲が低い」と判断され、書類選考の時点で落とされることもあります。履歴書や職務経歴書でアピールできる経験が少ないことが、転職において大きな障壁となってしまいます。
ビジョン通りのキャリアを歩みにくくなる
当初は「数年だけ楽な現場で働こう」と思っていたものの、気づけば何年も同じ案件に留まり、当初描いていたキャリアパスから大きく外れてしまうケースがあります。「マネジメントに挑戦したい」「自社開発でサービスに関わりたい」といった想いがあっても、経験が伴っていなければその道に進むことは困難です。キャリアの再構築には多くの労力と時間がかかるため、早めに方向性を見直す必要があります。
モチベーションが続かない
「業務が簡単すぎる」「同じことの繰り返し」といった日常は、最初は気楽でも、徐々にモチベーションを削ぐ原因になります。特に向上心が強いエンジニアや成長を重視する人にとっては、刺激のない日々がストレスにすらなり得ます。仕事への満足感が得られず、精神的に消耗してしまうこともあるため、「楽さ」だけを基準に職場を選ぶことには慎重になるべきです。
“楽”と“キャリア”の関係性


SES企業で「楽な働き方」を選ぶことは、短期的には精神的・体力的に快適に感じられるかもしれません。しかし、それが長期的なキャリア形成にどのような影響を与えるのかは慎重に考える必要があります。


キャリアの積み上げに繋がらない場合がある
“楽”な案件に長く関わることで、スキルアップや新しい挑戦の機会が減ってしまうリスクがあります。特に、インフラ保守やテスト、サポート業務などは、業界の進化についていく技術的な成長が見込めないことも。将来的にキャリアチェンジや転職を検討する際、経験不足が足かせになる可能性があります。
過去の“楽”な時期に依存してしまう
一度「楽な環境」に慣れてしまうと、それが当たり前になり、少しでも負荷の高い仕事に対して拒否反応を示すようになることがあります。その結果、「楽じゃないから嫌」「やりたくない」と感じる案件ばかりになってしまい、選択肢が狭まってしまうケースもあります。
キャリアの方向性を見失いやすい
“楽”であるがゆえに、強い動機や成長欲求を持たずに働くスタイルが身についてしまい、数年後に「自分は何がしたいのか」「このままで良いのか」と迷ってしまうことがあります。仕事が快適であればあるほど、自己成長の必要性を感じづらくなり、気づいた時には他のエンジニアと大きな差がついているという事態にもなり得ます。
まとめ


SES企業での働き方には、“楽”と感じられる現場が一定数存在します。確かに体力的・精神的な負荷が少ない案件では、快適に仕事を続けられるというメリットがあります。しかし、その「楽さ」にはデメリットもあり、長期的なスキルアップやキャリア形成において大きなハンデとなる可能性も否めません。
重要なのは、“楽”を取るか“成長”を取るかを自分の価値観と照らし合わせて考えること。そして、仮に今“楽”を選ぶ場合でも、将来のキャリア設計を見据えた行動や学びを怠らない姿勢が必要です。「楽に働けるからいい」ではなく、「その先に何があるのか」を見極めながら選択していくことが、後悔しない選択につながります。