転職エージェントにSES企業ばかり紹介される!その理由を徹底解説

「転職エージェントに登録したのに、紹介されるのはSES企業ばかり……」と悩む求職者は少なくありません。希望する働き方やキャリアの方向性とは異なる求人ばかりを提案され、モヤモヤしている方も多いのではないでしょうか。なぜ、エージェントはSES企業を頻繁に紹介してくるのか?この記事では、エージェントの仕組みや求人市場の実態に踏み込みながら、その理由をわかりやすく解説します。後半では、優良な企業に出会うための具体的な工夫や見極め方も紹介していますので、「本当に自分に合った職場を見つけたい」と考える方は、ぜひ最後までご覧ください。
SESとは

SES(システムエンジニアリングサービス)とは、エンジニアが自社に在籍しながらクライアント企業に常駐し、業務を遂行する働き方です。業務内容は多岐にわたり、開発・インフラ・テスト・保守運用など幅広い領域をカバーします。SES企業はプロジェクトごとに人員を配置し、労働力を提供することで報酬を得ています。雇用はあくまでSES企業との間にあるため、現場が変わっても雇用は継続されるのが特徴です。一方で、自社ではなく他社の現場で働くため、帰属意識が希薄になったりキャリア形成が不透明になりがちな一面もあります。
転職エージェントとは

転職エージェントとは、求職者と企業をつなぐ人材紹介サービスの一種です。専任のキャリアアドバイザーが付き、求職者の希望条件や経歴をもとに求人を紹介し、応募から面接、内定までをサポートしてくれます。無料で利用できる点が魅力で、非公開求人にアクセスできるメリットもあります。
また、企業側は採用が決定した際に報酬(成功報酬型)を支払う仕組みであるため、エージェントは「採用されやすい」「内定が出やすい」案件を優先的に紹介しがちです。結果として、求人数が多く採用確率の高いSES案件が多くなる傾向が生まれます。具体的なその仕組みについては次のセクションで説明いたします。
転職エージェントがSESを紹介する理由


エージェントの報酬構造
転職エージェントは、紹介した人材が企業に入社した際、企業側から成功報酬として「年収の30〜35%」前後の手数料を受け取るビジネスモデルです。SES企業は採用数が多く、報酬水準も安定しているため、エージェントにとって“成果を出しやすい取引先”として優先的に扱われがちです。さらに、SES企業側も採用に積極的で、内定までのスピードも早いため、紹介実績を重視するエージェントにとっては優先して紹介したい存在となっています。
市場におけるSES求人比率の高さ
エージェントが保有する求人のうち、ITエンジニア職においては90%以上がSES関連の案件であることも多々あります。特に未経験〜若手向け求人においては、即戦力や専門性を問わずアサインしやすいSES求人が目立ちます。このように市場全体における求人の偏り自体が、求職者にSESを勧めざるを得ない背景となっているのです。
売り手市場による一部SES企業の合格率の高さ
ITエンジニア業界は慢性的な人材不足が続いており、特にSES業界では常に人手を求めている状態です。そのため企業にはよりますが、求職者の経歴やスキルに関わらず比較的合格しやすいのが特徴です。エージェントとしても「まずは内定を」と考える場面では、合格率の高いSES企業を優先して紹介する傾向が強くなります。結果として、求職者の希望よりも“通りやすい”求人が先に提示されることが起こりがちなのです。
SES企業ばかりの紹介を防ぐには

「自分は自社開発や社内SEを希望しているのに、なぜかSES企業ばかり紹介される……」という経験をした人は少なくありません。転職エージェントの性質上、SES求人の比率が高くなるのはある程度仕方のないことですが、自分の志向に合った企業を紹介してもらうためには、利用者側にも工夫が必要です。ここでは、エージェントとのやり取りにおける注意点と対策を紹介します。

希望職種・働き方を明確に伝える
まず何よりも重要なのは、自分が望む職種・働き方を明確に言語化することです。「エンジニア職で転職したい」とだけ伝えると、汎用的なSES案件にマッチングされてしまうことが多くなります。
たとえば、「自社開発のWebエンジニア希望」「社内SEとしてインフラ構築に携わりたい」など、具体的なキーワードで要望を伝えるようにしましょう。また、「SES案件は除外してほしい」とはっきりと伝えるのも効果的です。優秀なエージェントであれば、こうした希望を踏まえて他業態の求人を探してくれます。
エージェントを複数併用する
転職エージェントごとに取り扱う企業や求人の傾向は大きく異なります。あるエージェントではSES企業ばかりを紹介されても、他では自社開発企業の紹介が多いというケースも珍しくありません。
そのため、2〜3社のエージェントを並行して利用し、情報の偏りを回避するのが賢明です。特にITエンジニア専門をうたっているエージェントであれば、自社開発企業の求人も複数保有しているため、SES以外の選択肢に出会える確率が格段に上がります。
面談時にエージェントの姿勢を見極める
エージェントにも様々なタイプが存在します。初回面談で「とにかく早く内定を取りましょう」「まずは現場経験が大事だからSESでいいんじゃないですか?」などと一方的に誘導するような担当者は注意が必要です。
一方で、あなたのキャリアビジョンや希望条件を丁寧にヒアリングしてくれるエージェントも確かに存在します。面談中のやり取りを通じて、誠実に向き合ってくれるかどうかを見極めましょう。
ポートフォリオやスキル証明を用意しておく
自社開発や受託開発を希望する場合は、自分がどんなスキルを持ち、どんな成果を上げられるのかを示すポートフォリオが有効です。また若手や経験がやや浅い場合は、SES以外の選択肢を増やすためには、意欲と実力を可視化できる資料があると非常に有利です。
自分でも企業情報をリサーチする
エージェントから提示された求人情報がすべてではありません。実際の業務内容や待遇、現場環境については、自ら調査する姿勢も重要です。SNSや口コミサイト、企業の採用ページを活用して情報を補完し、納得のいく判断を下すようにしましょう。
SES企業の中で優良企業を見分けるポイント

SESという働き方にネガティブな印象を持っている方も多いですが、すべてのSES企業が悪いわけではありません。むしろ、働きやすく成長できる環境を整えている“ホワイトSES企業”も確かに存在します。では、そうした優良企業をどう見分ければよいのでしょうか。以下にそのポイントを詳しく解説します。

契約形態や案件情報を事前に明確に提示してくれる
優良なSES企業は、面接前後に関わらず、案件の内容や現場環境、技術スタック、契約期間などを明確に伝えてくれます。「どこで、誰と、何を、どのように行うのか」という情報開示がある企業は、透明性を大切にしている証拠です。逆に「入社後に案件をお伝えします」と曖昧な対応をする企業は注意が必要です。
給与の仕組みや単価配分が明示されている
SES業界では、企業が顧客から受け取る単価と、エンジニアに支払う給与との間に大きな差があることもあります。優良企業は、「単価の◯%を給与として還元しています」といった具体的な説明を行い、納得感のある待遇を提供します。単価の開示がある企業は、利益構造を隠すことなく信頼できると判断できます。
定期的なフォローアップとキャリア相談が実施されている
現場に常駐するスタイルでは、本社とのつながりが希薄になりやすいため、定期的な1on1やキャリア面談を行っている企業は評価できます。悩み相談やスキルアップの相談ができる体制が整っていることで、孤独感の軽減や中長期的なキャリア形成につながります。
スキルアップ支援が制度として整備されている
優良なSES企業は、外部の研修・資格取得支援制度、社内勉強会などを活用して、エンジニアのスキル向上に力を入れています。「案件に送り出すだけ」で終わらせず、エンジニアのキャリアを本気で考えている企業かどうかが判断材料となります。
エンジニアに現場選択権がある
配属される現場をエンジニア自身が選べる、あるいは複数の候補から選択できる制度がある企業は、尊重されている感覚を持ちやすく働きやすい傾向があります。逆に、面接後に勝手にアサインされる、いわゆる「案件ガチャ」が頻発する企業は避けるべきです。
評判や口コミが良好である
実際に働いている社員の声や、転職口コミサイトでの評判は有力な判断材料となります。「上司がこまめに現場訪問してくれる」「スキルアップの支援が手厚い」など、ポジティブなフィードバックが多数見られる企業は信頼性が高いです。ただし、過度に口コミを信じすぎるのではなく、複数の情報源を併用しましょう。
まとめ

転職エージェントがSES企業ばかりを紹介してくる背景には、彼らの報酬構造や市場の求人比率、さらには採用確率の高さといったビジネス的な事情が密接に絡んでいます。一見するとエージェントに不満を抱きたくなる場面もあるかもしれませんが、その仕組みを理解することで、より賢い転職活動が可能になります。
重要なのは、「なぜSES企業を紹介されるのか」という構造的な理由を知ったうえで、自己主張をしっかりと行い、自分の理想に合った職場環境を引き寄せることです。具体的には、自社開発・社内SEといった職種の希望を明確に伝え、複数のエージェントを併用することで情報の偏りを防ぐ戦略が有効です。また、初回面談時のエージェントの対応から姿勢を見極めることも、後悔しない転職先選びの第一歩となるでしょう。
一方で、すべてのSES企業が悪というわけではありません。中にはエンジニアのキャリアを真剣に考え、情報開示・教育体制・案件選択の自由などをしっかり整備している優良企業も存在します。大切なのは、職種や業態そのものに対する偏見を持つのではなく、「自分の希望とマッチする企業かどうか」を見極める視点を持つこと。そうした視座を育てていけば、たとえSESという枠組みであっても、満足度の高いキャリアを築くことは十分に可能なのです。